相続税

相続税とは 相続税とは 相続税とは

 相続税は、亡くなった人(被相続人)から、個人が相続等で財産を取得した場合に、その取得財産に課される税金です。

 日本では昔から存在する税金ですが、諸外国では相続税自体のない国や相続税を廃止している国も数多くあります。

相続税の申告が必要な人 相続税の申告が必要な人 相続税の申告が必要な人

 亡くなった人(被相続人)から相続等によって「財産を取得したそれぞれの課税価格の合計額」が、遺産に係る基礎控除額を超える場合に、相続税の申告が必要となります。

 つまり、遺産の総額が基礎控除額を超えなければ申告は不要となります。

(具体例)

 相続人が2名(妻と長男)の場合には、基礎控除は4,200万円となります。

(相続人の数え方)

 法定相続人の数ですが、相続人が相続放棄をした場合でも、税法上は相続放棄がなかったものとして相続人の数に含まれます。

 また、養子については、実子がいる場合には1人(実子がいない場合は2人)まで相続人の数に含まれます。

 養子については、不当に相続税の負担を回避できないよう上限が設けられているのが理由です。

(相続人とは)

 民法では、相続人の範囲と順位について次の通り定めています。

(出典:国税庁HP)

相続税の申告・納税 相続税の申告・納税 相続税の申告・納税

 相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日(通常は死亡した日)の翌日から10カ月以内に、被相続人の住所地を所轄する税務署に申告するとともに、相続税を金融機関等で納税しなければなりません。

 申告や納税が期限に遅れると、加算税や延滞税が掛かりますので期限内に申告及び納税を済ませることが大切です。

 

(争族となっている場合

 申告書は、通常は相続人全員の連名により行いますが、相続分について相続人間で争いがある等、連名で申告することが困難な場合には、単独で申告することも可能です。

 手続きの詳細については、お近くの税務署又は相続税に詳しい税理士にお尋ねください。


相続税の対象となる財産 相続税の対象となる財産 相続税の対象となる財産

1.被相続人が亡くなった時点で所有していた財産

 主な財産としては、①土地・建物、②株式・公社債などの有価証券、③預貯金、④現金などのほか、金銭に見積もることができる全ての財産が課税対象となります。

 

2.国外財産

全ての財産が課税対象ですので、日本国外にある財産も対象となります。

 

3.名義財産

本当は被相続人の財産であるが、家族や他人名義となっている財産がある場合には相続税の課税対象となります。

被相続人に内緒にしていたヘソクリや、子供名義の積立預金等も課税対象となります。

 

4.みなし相続財産

被相続人の死亡に伴い支払われる「生命保険金」や「退職金」などが対象となります。

  • 民法上、生命保険金は受取人固有の財産となりますが、税法上はみなし相続財産という税法特有の解釈となっています。

なお、「生命保険金」と「退職金」は、それぞれ一定金額までは非課税となります。

5.被相続人から取得した相続時精算課税適用財産

被相続人から生前に贈与を受け、贈与税の申告の際に相続時精算課税を適用していた場合には、その財産は相続税の課税対象となります。

この場合、相続開始の時の価額ではなく、贈与の時の価額を相続税の課税価額に加算します。

 

6.被相続人から相続開始前3年以内に取得した暦年課税適用財産

被相続人から相続などによって財産を取得した人が、被相続人が亡くなる前3年以内に贈与を受けていた財産は、相続税の課税対象となります。

相続財産の価額から控除できる債務と葬式費用 相続財産の価額から控除できる債務と葬式費用 相続財産の価額から控除できる債務と葬式費用

1.控除できる債務

 被相続人の債務は相続財産の価額から控除できます。

 主な債務としては、①借入金やローン、②クレジットカードなどの未払金、③被相続人の税金や社会保険料で納付していないものが対象となります。

 

2.控除できる葬式費用

 被相続人の葬式で相続人が負担した葬式費用は、相続財産の価額から差し引かれます。

 葬式費用は、①葬儀会社などの支払、②お寺への支払、③お通夜に要した費用などです。

 なお、墓石の購入費用、香典返しや法要の費用などは葬式費用に含まれません。

相続税特有のルール 相続税特有のルール 相続税特有のルール

相続税には、税法特有のルールがあり、代表的なものとして次のようなものがあります。

1.財産の評価方法

 

① 土地

土地の価値と言えば、通常は時価となるのですが、相続税には独自の評価方法が定められています。

具体的には、土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式の2種類があります。


(路線価方式)

路線価が定められている地域における評価方法です。

路線(道路のこと)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことで、千円単位で表示しています。

路線価方式における土地の価額は、その土地の形状等に応じて各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて算出します。

(倍率方式)

 路線価が定められていない地域の評価方法です。
 倍率方式における土地の価額は、その土地の固定資産税評価額(市税事務所、市区役所又は町村役場で確認できます)に、一定の倍率を乗じて計算します。

 路線価図及び評価倍率表は国税庁ホームページで閲覧できます。

 なお、賃貸されている土地については、権利関係に応じて評価額が調整されます。

② 建物

 建物の価値と言えば、土地と同様に通常は時価となるのですが、相続税法上は固定資産評価額に倍率(通常は1.0)を乗じて計算することとなっています。
 したがって、評価額は固定資産税評価額と同額となります。
 賃貸されている家屋についても、土地と同様に権利関係に応じて評価額が調整されます。

③ 上場株式

 上場株式とは、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場されている株式をいいます。上場株式は金融商品取引所が公表する課税時期(相続・遺贈の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与日)の最終価格によって評価します。

 なお、課税時期の最終価格と下記価額のうち、最も低い価額により評価します。

・課税時期の月の毎日の最終価格の平均額

・課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額

・課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額

④ 非上場株式

 非上場株式とは、取引相場のない株式(「上場株式」及び「気配相場等のある株式」以外の株式)のことを指します。

 相続や贈与などで株式を取得した株主は、税法上、大きく2種類に区分されます。

・その株式を発行した会社の経営支配力を持っている同族株主等

・それ以外の株主

 上記株主は、それぞれ「原則的評価方式」又は「特例的な評価方式の配当還元方式」により評価することになります。

 

国内企業の内、上場企業は0.1%未満です。したがって、ほとんどの企業が非上場であるため取引相場というものが存在しません。

 

 そのため、その評価に当たっては、課税の公平が担保されるよう一定にルールによって評価が行われます。

⑤ 生命保険契約に関する権利

 定期保険等の死亡保険に加入している場合、保険契約者、被保険者及び保険料負担者がご自身であり、保険金の受取人が配偶者や子になっているケースが多いと思います。


 しかし、ご自身以外を被保険者にして、ご自身が保険料を負担していた場合には、ご自身に相続が発生しても被保険者が死亡したわけではないため、保険金自体は発生しません。


 このように、保険事故が発生していない生命保険契約に関する権利の価額は、その契約を相続発生の時に解約するとした場合に支払われることとなる「解約返戻金の額」によって評価します。


 なお、解約返戻金のほかに支払われることとなる前納保険料の金額、剰余金の分配額等がある場合にはこれらの金額を加算します。


また、解約返戻金の額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額がある場合には、その金額を差し引きます。


2.法定相続人の数

 

 相続人の範囲や法定相続分は、民法で定められていますが、相続税法特有の解釈があります。

① 相続を放棄した人

 「相続を放棄した人」とは、相続の開始があったことを知った時から3ケ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をした人のことをいいます。

 このように、民法の規定では相続放棄した人は、初めから相続人とならなかったものとされます。

 ただし、相続税の申告では、相続放棄した人を相続人の数にカウントして計算します。

 具体的には、相続税の基礎控除額の計算上、相続放棄した法定相続人を除かずに計算します。

 

② 養子がいる場合

 法定相続人の数に含める被相続人の養子の数は、一定数に制限されています。

 

・被相続人に実の子供がいる場合   ・・・ 1人まで

・被相続人に実の子供がいない場合  ・・・ 2人まで

 

 ただし、養子の数を法定相続人の数に含めることで、相続税の負担を不当に減少させる場合には、その原因となる養子を数に含めることはできません。

 

3 みなし相続財産

 相続税法では、本来は被相続人の財産ではないが、相続財産とみなされる財産を「みなし相続財産」といいます。

 民法の規定では相続財産に含まれないため、相続人からするとややこしい仕組みで混乱の要因となります。

 みなし相続財産となる代表的な財産としては、被相続人の死亡によって発生する「生命保険金等」と「死亡退職金等」があります。

 

① 生命保険金等
 生命保険金等は、被相続人の死亡によって保険金を請求する権利が受取人に発生しますので、本来は受取人固有の財産となります。

 しかし、相続税法では一定の非課税枠を設けて、非課税枠を超過する額に対して相続税の課税対象としています。

(非課税枠)

 「500万円×法定相続人の数」

 

② 死亡退職金等

 被相続人に支給されるべきであった退職手当金や功労金などを相続人等が受け取ったときは相続税の課税対象になります。

 なお、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。

 死亡退職金等についても、相続税法では一定の非課税枠を設けて、非課税枠を超過する額に対して相続税の課税対象としています。

(非課税枠)

 「500万円×法定相続人の数」

相続放棄してもみなし相続財産は 受け取れる?受け取れない?

 みなし相続財産は、本来は相続財産ではないため、相続放棄をしても受け取ることができる財産となります。
 したがって、相続放棄をしても相続税の申告が必要となるケースがあります。

相続税の税務調査 相続税の税務調査 相続税の税務調査

1.税務調査を受ける確率

 「税務調査」という言葉を聞くと、会社経営者や個人事業者以外の人に縁のない話のように思いますが、一般のサラリーマンや年金受給者の方でも税務調査を受ける可能性があります。

 

 その一つが「相続税の税務調査」です。

 平成27年に相続税の非課税限度額が下げられたことで、相続税は身近な税金の一つとなりました。

 

 では、相続税の税務調査はどのくらいの確率で実施されているのでしょうか。

国税庁発表の「令和元年分 相続税の申告事績の概要」によると、令和元年における被相続人数(死亡者数)は1,381,093人(対前年比101.4%)、そのうち相続税の申告書を提出した人数は115,267人でした。

 

 同じく、国税庁発表の「令和元事務年度における相続税の調査等の状況」によると、実地調査件数は10,635件でした。

 

 対象となる期間が、暦年(1~12月)と国税当局の事務年度(7月~翌年6月)と異なりますが、上記計数から推測すると、

10,635件/115,267人 = 9.2% となります。

 

 つまり、おおよそ9人に1人が税務調査の調査対象者になるということです。

これは、他の税目(法人税や所得税)と比較しても相当に高い確率です。

 なお、上記は新型コロナウイルスの拡大による税務行政への影響も少なからず考えられますので、もう少し確率は高いと考えられます。

 

 

2.税務調査で追徴課税となる確率

 上記の「令和元事務年度における相続税の調査等の状況」によると、実地調査件数10,635件のうち、申告漏れ等の非違件数は9,072件でした。

つまり、85.3%の人が追徴課税となっている訳です。

 

 追徴課税の原因としては、次のようなことが考えられます。

① 財産の評価方法や計算に誤りがあった

② 特例の適用に誤りがあった

③ 申告後に新たな財産が発見された

④ 計上していない財産があった

 

 上記、「① 財産の評価方法や計算に誤りがあった」「② 特例の適用に誤りがあった」は、相続税申告に精通した税理士に依頼することで回避できます。


 「③ 申告後に新たな財産が発見された」
ケースは、遺言等がなく被相続人の財産の概要が把握できない場合に起こり得ますので、生前から専門家に相談して対策を講じる必要があります。


 「④ 計上していない財産があった」
ケースは、そもそも相続財産になるとは思っていなかったという勉強不足や誤解が考えられます。

 このケースも、相続税に強い税理士に依頼することで回避できます。

 念のため、追徴課税となる原因には、「故意に財産を隠蔽」などしていたケースもあります。

 上記の「令和元事務年度における相続税の調査等の状況」によると、申告漏れ等の非違件数9,072件のうち、1,541件には仮装又は隠蔽行為があったとして重加算税が賦課されています。

 いわゆる「脱税」の件数であり、重加算税の賦課割合は17.0%となります。

 国税職員の財産調査能力は相当に高度ですので、必ず不正は暴かれます。

 間違っても財産を隠蔽するなどの脱税行為はしないでください。