1.税務調査を受ける確率
「税務調査」という言葉を聞くと、会社経営者や個人事業者以外の人に縁のない話のように思いますが、一般のサラリーマンや年金受給者の方でも税務調査を受ける可能性があります。
その一つが「相続税の税務調査」です。
平成27年に相続税の非課税限度額が下げられたことで、相続税は身近な税金の一つとなりました。
では、相続税の税務調査はどのくらいの確率で実施されているのでしょうか。
国税庁発表の「令和元年分 相続税の申告事績の概要」によると、令和元年における被相続人数(死亡者数)は1,381,093人(対前年比101.4%)、そのうち相続税の申告書を提出した人数は115,267人でした。
同じく、国税庁発表の「令和元事務年度における相続税の調査等の状況」によると、実地調査件数は10,635件でした。
対象となる期間が、暦年(1~12月)と国税当局の事務年度(7月~翌年6月)と異なりますが、上記計数から推測すると、
10,635件/115,267人 = 9.2% となります。
つまり、おおよそ9人に1人が税務調査の調査対象者になるということです。
これは、他の税目(法人税や所得税)と比較しても相当に高い確率です。
なお、上記は新型コロナウイルスの拡大による税務行政への影響も少なからず考えられますので、もう少し確率は高いと考えられます。
2.税務調査で追徴課税となる確率
上記の「令和元事務年度における相続税の調査等の状況」によると、実地調査件数10,635件のうち、申告漏れ等の非違件数は9,072件でした。
つまり、85.3%の人が追徴課税となっている訳です。
追徴課税の原因としては、次のようなことが考えられます。
① 財産の評価方法や計算に誤りがあった
② 特例の適用に誤りがあった
③ 申告後に新たな財産が発見された
④ 計上していない財産があった
上記、「① 財産の評価方法や計算に誤りがあった」と「② 特例の適用に誤りがあった」は、相続税申告に精通した税理士に依頼することで回避できます。
「③ 申告後に新たな財産が発見された」ケースは、遺言等がなく被相続人の財産の概要が把握できない場合に起こり得ますので、生前から専門家に相談して対策を講じる必要があります。
「④ 計上していない財産があった」ケースは、そもそも相続財産になるとは思っていなかったという勉強不足や誤解が考えられます。
このケースも、相続税に強い税理士に依頼することで回避できます。
念のため、追徴課税となる原因には、「故意に財産を隠蔽」などしていたケースもあります。
上記の「令和元事務年度における相続税の調査等の状況」によると、申告漏れ等の非違件数9,072件のうち、1,541件には仮装又は隠蔽行為があったとして重加算税が賦課されています。
いわゆる「脱税」の件数であり、重加算税の賦課割合は17.0%となります。
国税職員の財産調査能力は相当に高度ですので、必ず不正は暴かれます。
間違っても財産を隠蔽するなどの脱税行為はしないでください。